大蔵高丸

山名由来 ver.2 2008年7月1日 火曜日更新
山名:大蔵高丸・おおくらたまかる 山域:中央線沿線・大菩薩連嶺
南大菩薩
別名:大倉山、大倉高丸、
無間(ムゲン)平嶺、初鹿野山
標高:1,781m
「甲斐国志」は州の鎮めとして、北が金峰山、西が白峯、南が蛾ヶ岳とし、東は「初鹿野山」をあげている。時代が流れてどの山か特定が難しいが、「都留・山梨二郡の境」とあることや、前後の山名から大蔵高丸と大谷ヶ丸にかけての山を指すとみられている。

出典:
大倉高丸以南 湯ノ沢峠から野山を百米も登ると大倉高丸(1,752m)に達する。
大倉沢のツマリに当っているのでこの名がある。
野山のために展望は立派で、略白屋ノ丸(白谷丸)に同じい。
但し野山ばかりの間で、白屋ノ丸のように周囲に立派な森林が無いから、気持ちの点において大分の差異が出てくる。
しかし今まで述べた黒嶽山(黒岳)、白屋ノ丸、大峠、等を振り返った眺めは、いかにも親しい軟らかな眺めである。
これから尾根筋の道は草の加減によって変化があるが、立派に踏めているとは言えない。
草の茂った時は相当に閉口するような場所もある。
しかし大体において気持ちの良い野道で、展望も良く、時節によっては百花爛漫、錦の茵にも勝った柔らかい足触りを持っている漫歩気分の逍遥にはもってこいである。

出典:田島勝太郎著 奥多摩 山と渓谷社 P183
大菩薩連嶺の2000m級テラスと南半のテーブル・マウンテンをつなぐ鞍部として意義のある湯ノ沢峠のタルは、東京から大きな切れ込みとなって望まれる。
そのタルの底部から左へ突上げて行くアウト・ラインは、大蔵高丸の船首(みよし)のような隆起となり、船を伏せたように平らな山背が1キロ半ほど続いて、ハマイバに至って急に落ちる。
上州の荒船山に似たこの山容に、里人は何も形容地名を付けていないのが惜しまれる。

湯ノ沢峠から水晶薙の白い崩壊地を覗きながら3,40分登ると大蔵高丸(1781m)の峰頭に立つ、南西面の大倉沢のツメに当る丸頭だからそう呼ぶ。
この峰は北方湯ノ沢峠から至る他に、日川から大倉沢を登ってくることもできる。
クラは岩石の意で、この沢には露岩が多いが気楽に遡行できる。
大倉沢出合から三時間くらいであろう。

春ならば山桜の咲くカヤト尾根を、360度の展望を楽しみながら行くと、ハマイバに達する。
この峰については、友人加藤秀夫君の「破魔射場考」という論文があるから、それをここに掲げる。

出典:岩科小一郎著 大菩薩連嶺 朋文堂 P254
大和町側の大蔵沢のツメに当たり、「大きなクラ(岩石)」が多い沢の上にある高い山の意味らしい。
「マル」は朝鮮語の山を指す言葉。

出典:新日本山岳誌 日本山岳会編著 ナカニシヤ出版 P704
大蔵高丸は大蔵沢の突上げである高ノ丸

出典:谷有二著 日本山岳伝承の謎 未来社 P68
おお

@接頭語。美称として。
Aオホ(大)で「大きい」「立派な」「主要な」「中心となる」「程度の甚だしい」などの意。
Bヲの転。
Cアヲの転。
Dアフ(アブ)の転。
Eアハの転。
F動詞ヲヲル(撓)の語幹で「しなった地形」

出典:地名用語語源辞典 東京堂出版 P81
くら

@山中の切り立った岩盤。断崖。
A山の岩の多いところ。
B谷を意味する古語。

以上@〜Bは動詞クル(刳る)の連用形クリの転か。
あるいはクル、またはクユ(崩)の語幹に接尾語ラのついた形で、「崩壊地形、侵食地形」をいう語か。

Cクラ(座)で「座所」、「場所」の意か。ク(処)から出た語か。
D形容詞クラシ(暗)の語幹で、「暗い所。日蔭地」などを示すか。
Eクラ(蔵)で、令制の大蔵省、内蔵寮およびその職制にちなむ地名か。
Fクラ(倉・蔵)で、一般に「倉庫」を示す地形か。この語はオク(置)・ラ(接尾語)の意という。
G馬の背にのせるクラ(鞍)の形による見立て地名もあるか。

出典:地名用語語源辞典 東京堂出版 P181
くら

これらの字を書いてクラと読む地名がたくさんある。
クラは「谷、ガケ」を意味する古語や方言で、これらの地名は「深い谷」や「絶壁」それから転じて「絶壁のある山」などの名になっている。
たとえば、大倉山、高倉山など。
鎌倉、岩倉、朝倉などの倉や、股グラなどのクラも「谷」の意だと思われる。
京都の鞍馬山の鞍も「がけ」の意であろう。
奈良県南部山岳地帯では岩=ーの字を書いてクラと読ませる絶壁の名がある。
(一の岩、二の岩、大蛇ーなど)
富山県では峅という字をクラと読ませて芦峅寺(アシクラジ)、岩峅寺(イワクラジ)などという地名がある。
群馬県の谷川岳に芝倉沢、一ノ倉沢、一ノ倉岳などがある。
このようにクラという地名用語は、「谷、峡谷、絶壁、断崖、岩山」というような意味に使われているが、これに良く似た語が外国語にもある。

たとえば、朝鮮語 kor(谷)
インドシナのモンクメール語 kula(岩)
インドネシア語 kara(岩)
スメル語 kla(山)
ロシア語 gora(山)
ゲール語、英語 glen(峡谷)
英語 clough(峡谷)
clift(絶壁)
cleft(裂け目)など。

このクラは岩礁、暗礁を意味するクリ(礁、栗、繰、久利、具利)や石地を意味するゴウラ(強羅)、ゴウロ(合露、紅露、五郎)などと関係がある。

くり、ごうら、ごうろ。
倉、蔵の二字は当て字で、字義通りの倉庫、土蔵などの意味につかった地名はきわめて少ないようである。

倉敷、蔵前などは文字通りの意味で当て字ではない。
鞍の字も当て字と思われる用法(鞍馬山、鞍崎)と、本字の場合(乗鞍岳、鞍掛峠、鞍作)とがある。
闇、暗の二字はともにクライ、アカルクない意味だが、当て字として使われるだけで、本字としては使われていないようである。

出典:山中襄太著 地名語源辞典 校倉書房 P135
たか

高の字を書く地名は、各地に多いが、字義通りに「高い」意味ではなく「鷹」などの当て字もあるようである。
鷹の字を書く地名は鷹ノ巣山、鷹取山などがあるが、これらも「高」字の当て字もあるらしい。
タカ(高)の字の語源を大言海は「タハ肥前国高久郷、薩摩国高城郡多岐、豊後国日高郡比多(今、日田)の如くたに高ノ意あり。
高処(タカ)ナリ、中処(ナカ)に同じ」という。
安田徳太郎氏によれば「上方に」を意味する

マレー語、タガログ語、ビサヤ語のsakai
イバン語takai

「山」を意味するダイヤ語dakiなどは日本語「高い」「岳」に関係するという。
日本外来語辞典によれば、岳(タケ)すなわち山を意味する語に

朝鮮語taki
蒙古語tak
サカイ語tako
トルコ語tag,dag

などがあり、高を意味する語に

蒙古語teg,dek

上を意味する語に

Khaling語tukaなどがある。

日本語のタカ(高)、タケ(岳)、タケ(身長)、タケル(長る)、タケ(竹)、ツカ(塚)などとこれらの語とは関係があるらしい。

出典:山中襄太著 地名語源辞典 校倉書房 P215
たか

@形容詞タカシ(高)の語幹で、「高い所」をいう。
端祥地名用語としても使われる。

A上。上のほう。

B能登で、小山。

C田地。田畑。地所。

D海に対して陸地。陸。

E陸に近い海上。

Fアサ(浅)に通ずるか。タカセ(高瀬)など。⇒あさ。

Gタカには「限度。限界」の意あり。

H鳥類のタカ(鷹)の棲息、飼育に関連するものか。また鷹狩にちなむ地名か。

Iタガの転か。⇒たが

出典:地名用語語源辞典 東京堂出版 P366
まる

@円形、球形を示す。
山名、川の曲流部、山裾の湾曲部、円形の田や山間小平地など。
なお丸山はとくに円墳に名づけられている場合も多い。

A中近世の城郭の部分を示す用語。

B〜バル(原=墾)の転。
北九州に多い〜丸の形の地名など。

C〜バル(張)の転か。
全国的に丘陵。台地の先端、張り出したところに見られる。

D動詞マルグ(転)、マルゲル(転)などから「崩崖地形、侵食地形」を示すものもあるか。
山名語尾のマルもこの意か。⇒まるび。

Eナル(均。生。鳴など)の転か。⇒なる。

Fモリ(森。盛)などの転か。
〜丸の形で山名の語尾につく。⇒もり。

出典:地名用語語源辞典 東京堂出版 P592
大蔵(おおくら)は大きな崖の意。
高は山の意。
丸も山の意。

出典:日本山岳ルーツ大辞典 P584
小暮理太郎氏の『大菩薩連嶺暼見』によると、大正初期の地図には、この山は無間平嶺と記されてあったようである。

出典:甲斐の山旅・甲州百山 実業之日本社 P24
大蔵沢は、荒れて歩けないので、大蔵沢右岸の尾根を紹介。

出典:横山厚夫著 一日の山 中央線私の山旅 P84
大蔵沢支流の春木(子)沢のコースを紹介。
1360m付近の地形図破線路のことか。

出典:続東京周辺の山々 朋文堂 P71
出典:東京附近百名山 登山とスキー社 P138
出典:松本重男著 中央線に沿う山と高原 登山とスキー社 P119
考察
大蔵高丸は、大蔵沢のツメにある山なので、つけられた名のようです。
大蔵の蔵は当て字で、正確には大クラと書いたほうが良さそうです。
大蔵沢上流左岸には、大クラまたは大クラ岩とでも呼べるような断崖が露出していて、これが大蔵沢、大蔵高丸の由来になったと思われます。

丸は、山名語尾で丹沢や奥多摩にも見られます。
古代朝鮮では、峰のことをマルと言っていたようで、付近一帯に渡来してきた、百済人や高麗人の影響だろうというのが定説です。

提唱者は、小暮理太郎氏で、その後、谷有二氏が様々な著書で、さらに詳しく解説しております。丸についてはこちら⇒

大蔵高丸は大蔵と高丸とに分けることができると思います。
高丸は他の場所もあって、奥多摩石尾根の高丸山1733m、岩殿山の北西の高ノ丸782m、道志山塊朝日山西の岩戸ノ峰の別名高丸1288m

これらの高丸と区別するために、大蔵または大倉が冠されたのでしょうか?

これは僕の推測なのですが、高麗ノ丸が縮まって高丸と呼ばれるようになったのではないでしょうか?
つまり、高丸とは、高麗人の山という暗号が隠されていると思うのです。
参考写真
2005年8月20日(土)
2005年8月20日(土) 2005年11月19日(土)
2005年11月19日(土)
2006年2月5日(日)
2006年8月5日(土)
2006年8月5日(土) 2006年8月19日(土)
2006年9月2日(土)
2006年9月2日(土)
2006年9月23日(土) 2007年8月25日(土)
2007年8月25日(土)
2008年6月7日(土) 2008年6月28日(土)
山名標
写真館
由来の岩と思われる大蔵沢上流の岩場
大クラ・大クラ岩と仮称する
参考文献
田島勝太郎著 奥多摩 山と渓谷社 P183
岩科小一郎著 大菩薩連嶺 朋文堂 P254
新日本山岳誌 日本山岳会編著 ナカニシヤ出版 P704
谷有二著 日本山岳伝承の謎 未来社 P68
地名用語語源辞典 東京堂出版 P81
地名用語語源辞典 東京堂出版 P181
山中襄太著 地名語源辞典 校倉書房 P135
山中襄太著 地名語源辞典 校倉書房 P215
地名用語語源辞典 東京堂出版 P366
地名用語語源辞典 東京堂出版 P592
日本山岳ルーツ大辞典 P584
谷有二著 富士山はなぜフジサンか 山と渓谷社 P63
谷有二著 山名の不思議 平凡社 P96
小林経雄著 甲斐の山山 新ハイキング社 P101
甲斐の山旅・甲州百山 実業之日本社 P24
横山厚夫著 一日の山 中央線私の山旅 P84
続東京周辺の山々 朋文堂 P71
東京附近百名山 登山とスキー社 P138
松本重男著 中央線に沿う山と高原 登山とスキー社 P119
参考文献(ガイドブック)
東京付近の山 P152
アルペンガイド10 2-45 P222
アルペンガイド6 3 P305
アルペンガイド19 4 P116
続中高年向きの山100コース 23 P58
山梨百名山 P130
奥秩父と大菩薩の山々 P244
バリエーションルートを楽しむ P209
富士の見える山 P60
山日記
大蔵高丸1 2005年8月20日(土)
大蔵高丸2 2005年11月19日(土)
大蔵高丸3 2006年2月5日(日)
大蔵高丸4 2006年8月5日(土)
大蔵高丸5 2006年8月19日(土)
大蔵高丸6 2006年9月2日(土)
大蔵高丸7 2006年9月23日(土)
大蔵高丸8 2007年8月25日(土)
大蔵高丸9 2008年6月7日(土)
大蔵高丸10 2008年6月28日(土)