ページ 1 石保土山 2 石保土山の花
361 石保土山1 2005年7月23日(土) 奥秩父 管理人の記録
コースタイム 新犬切峠→0:50→指入峠→0:40→石保土山→1:00→
林道→0:10→斉木林道→1:00→白沢峠→0:30→
ゲート→0:40→高橋分岐→0:40→新犬切峠
合計歩行時間 5:30
往路時刻 池袋5:10→代々木5:21 5:23→八王子6:15 6:34→
塩山7:51 タクシー→新犬切峠9:00
復路時刻 新犬切峠→タクシー2時間→塩山
名 山 なし
交通費 合計23,780円  池袋⇒塩山1,890円 
塩山⇒三之瀬タクシー10,000円 三之瀬タクシー⇒塩山10,000円
塩山⇒池袋1,890円
ガイドブック なし



藪道拡大図by峰さん↓


1940年、昭和15年5月5日発行の田島勝太郎著「奥多摩」P347に次のような記述がある。
『小休の後発。これから分水界に分水東南へ犬切峠へ向かって進む。主として唐松の植林中を下る。間々雑木林もある。緩やかな傾斜で全く尾根という気分がないところを少し登って、4時25分石保土三角点に着く。
石保土は元より倉掛に比すると低いのであるが、位置が非情に良いので、展望は誠に宜敷い。
西北の側は古礼から破風・甲武信・国師。殊に子酉川はモヤの中ではあるが、全渓殆ど一目に見えて子酉の方向をよく現している。南は大菩薩が威風堂々あたりを払って西日の中にのさばっている。その東に三頭山、これ又モヤのせいで莫迦に高く見える。北は雑木林、南は茅野、直下は整然たる造林地で人工を加えた林地の眺めも悪くは無い。』


ネット仲間の峰さんからメールが入り、石保土(イシヤスド)山から斉木林道を歩くことになった。
ゲートのある新犬切峠に車を止め高橋側へ少し下る。
すると大きな広場があり、工事用林道の入口になっていて、その手前に「東京水道…」と書かれた標柱を見つけることができる。
指導標は無いが、ここが石保土山への入口である。
朝方雨が降っており、今も小雨がパラついていて、地面は滑りやすくなっている。
防火帯に出れば、ボサの中を歩くようになり、ヨツバヒヨドリなどの花々を愛でながらの楽しい山歩き。
膝丈ぐらいまでのボサは朝露をたっぷりと含んでおり、すぐに腰から下がビショビショになってしまった。
イケマの花も発見するが、小雨が降っていたので、おニューのデジカメは使えず、防水の旧デジカメを使いながら進んだ。
犬切峠付近の登山口 防火帯を行く
田島勝太郎著「奥多摩」P124に犬切尾根についての次のような記述がある。
『鳥小屋から犬切尾根が分かれる。これは末尾に藤尾山を起こし、高橋川と一ノ瀬川とを分けている。鳥小屋から分かれるところは、殆ど尾根のような気分がせぬ平べったい傾斜たる事は図面の通りで、石保土山となる。高橋、落合の渓谷と一ノ瀬川との間にたっているために、展望は誠に立派である。東側の鞍部は指入峠と呼ばれ、高橋奥と一ノ瀬との交通路である。その東の小突起は飯島尾根(一ノ瀬の方へ下るもの)の起点であるから飯島山とも呼ばれる。次に東に下れば犬切峠である。
中略…。一ノ瀬高橋の地方は、申すまでも無く僻遠の地で余り歴史のないところであるから、地名もくだらぬ由緒で、何某が休んでいて何々休場(ヤスンバ)など申す具合に、この地方の人が良く飼い犬を食料にする、犬の肉はご馳走のひとつであるから、一寸この峠で食うために犬を殺したような事が名称の起こりとなったのかも知れぬ。何れにせよ何等語るべき伝説はないのである。』


僕らは大昔に田島さんが歩かれた道を逆に辿っているのだ。
エアリアマップに載っている二本楢のピークの手前にもう一つピークがあり、そこを飯島山というのかも知れない。防火帯のピークなので、飯島山と飯島尾根がどこのことなのかは分からない。
二本楢も、二本のナラの木を発見することもできず下り道となってしまった。
その防火帯にポツンと忘れ去られたような巨岩が無造作に置いてあった。
もっと麓に置いてあれば、信玄の陣取石だとか御座石だとか俗な名で呼ばれているのだろうが、エアリアにも載っていない忘れられた登山道だけに、巨岩は何も語らず横たわっている。
左から犬切峠を起点としている林道が合流してくると指入(サスイリ)峠だ。
田島さんの本には『サス入沢のツマリで高橋から一ノ瀬の奥に出る間道である』と書いてある。
サス入沢は高橋川の支流であり、右に一ノ瀬へ下っていると思われる道を確認することができた。
巨岩がポツンとあった 指入峠
指入峠からノロカワ頭の右を巻く登山道になるが、すぐに防火帯に出て右に折れた。
少し防火帯を登ると、巨木の枯木の場所で左へ巻道が分かれるが、峰さんは「防火帯をそのまま進もう」と言う。僕は渋ったが「花が多いかもよ」なんて誘われたら行くしかない。
でもここは巻道を行くのが正解だったようだ。
霧で雰囲気が良い 膝丈のボサの中を登る
防火帯には霧が出ていて、幻想的な雰囲気だ。
だから今日は夏の日差しが無い分、涼しくて歩きやすい。
とあるピークで峰さんが僕を待っていた。
「もう着いたの?」
三角点が無いのでどうやら石保土山はここでは無いらしい。
時間的にも石保土山に着くには早すぎる。
ここまで来ると、靴の中まで水が浸入し、ヌルヌルで不快になっていた。
ミズナラから出てきたノリウツギ ピークを越えると草地が広がる
また小ピークを越えると、競り立つような急斜面が目の前に現れる。
峰さんはまたしても直登するようだ。
左の巻道を横目で見ながら僕も直登する。
登ってみれば意外と登れてしまうものである。
ニセ石保土山とも思われるピークにたどり着き、僕が写真撮影している間に、峰さんは三角点を探す。
仲間がいると役割分担できて嬉しい。
しかし、三角点は見つけることができなかった。
防火帯は南に下っていたが、僕らはここを石保土山と仮定して、コンパスを片手に北の斉木林道を目指して藪の中に突入した。
急登だ… なぜか笹藪に突入
ひ〜〜!藪なんて聞いてないよ〜。
先行する峰さんは、歩きやすいように背丈ほどもある熊笹押し倒してくれる。
それでも熊笹は身長160センチの小男に絡みつく。
「お〜い」と僕。
「ここだ〜」と峰さん。
視界は熊笹に遮られて0に近い。
峰さんを見失うことは、遭難を意味する。
藪の中では耳も澄ませなければいけない。
しばらくで、峰さんが左手に小高いピークを発見しそれに向かって進み始める。
猛烈な藪こぎで、何度か倒れた。
実際には10分ほどしかたっていないが、もう1時間も藪こぎしているような感覚になる。
「石保土山あったよ〜」という峰さんの声が聞こえたが、中々前に進まない。
熊笹が足に絡みついて離してくれないのだ。
ようやく藪から脱出すると石保土山の山頂だった。
田島さんの本からは想像もできないほど、カラマツと熊笹に覆われた山頂だった。
熊笹が足の踏み場もないほど生い茂り、落ち着いて腰を降ろせない。
虫もブンブン飛んでいる。
西に登山道らしきものがあったが、峰さんは北の笹藪に突入していく。
石保土山(いしやすどやま) 再び笹藪に突入
またしても、熊笹が僕の体に絡みつく。
だから夏の藪こぎはいやなんだ…。
石保土山の北のピークに着いたが、道は無く西に向かって下った。
途中で地図とコンパスを出して、何度も現在地を確認する。
藪なのになぜか笑顔… 藪の中のミズナラの巨木
熊笹と格闘していると、急に目の前がボヤける。
「あれメガネが無い?メガネ無いと死んじゃうよ〜」
藪での落し物は大概見つからない。
僕は死を予感するほど焦った。
しかし、メガネはすぐ下に落ちていて、なんとか命拾いした。

下って行くと、車のエンジン音が聞こえる。
バキバキ…。メリメリ…。ザザザ…。
以外の音が初めて聞こえた。
なんとなくホッとした。
そしてその後すぐに、登山道に出た。
これは石保土山を巻いてきた道だと思われる。
また峰さんによると、古いエアリアには、石保土山から尾根伝いの道が記されていたというが、そんなものは道の痕跡すら発見できなかった。
ともかく、藪から脱出できて良かった〜。
一ノ瀬高橋からの道に合流すると、砂利道となりさっきのエンジン音は笠取小屋へ向かう車のものと判明した。
やっと藪脱出 一ノ瀬高橋からの道に合流
「もう藪は無いよね?」
と僕は峰さんにきつく問い正した。
斉木林道に合流して、おにぎりを一つほおばる。
峰さんも僕も泥だらけになっていた。
ここからは白沢峠を目指す。
斉木林道に合流左折 指導標
斉木林道は季節が悪いのか、花は一つも無い。
峰さんと談笑しながら楽しく歩いた。
お喋りしながら歩くにはもってこいの道だ。
途中で白沢峠に置いてあるのと同じような廃車が打ち捨ててあるのを発見する。
昔はトラックも通っていたことの証だ。
土の柔らかい斉木林道 雰囲気の良い場所
田島さんの本に川浦峠と書かれている白沢峠に到着した。
静かな峠は虫もいないので、ここでお昼を食べることにした。
白沢峠
一ノ瀬高橋へは、指導標が無く分かりづらいが、雁峠方向の斉木林道の右の道を下る。
橋など整備された道で、エアリアに実線で表されても良い道だ。
しかし、これだけ静かな道は、エアリアに載せずに静寂さを保っていたほうが良いのかも知れない。
左:笠取小屋 右:一ノ瀬高橋 こんな長い橋もあり
高橋川へと続く清流沿いに下る。
苔むした深山の趣きたっぷりの道で秋の紅葉にもまた来たいと思ってしまったほど良い道だった。
一ノ瀬高橋への道 清流です
途中で巣から落ちたと思われるカケスの子供を見つける。
その子は僕らの前を逃げるように跳ねていく。
まだ飛べないようだ。
僕らは脅かさないように、すばやくその子を追い越した。
その子は母を求めるべくクエーと鳴いた。
斉木林道へ通じる林道に合流すると、「白沢峠」と書かれた白い指導標が下がっていた。
苔むした林床が広がる 再び斉木林道へ通じる林道に合流
砂利道を下るとゲートで、一般車は入れないようになっている。
ここからは車道となるが、道端には様々な花が咲き、僕の目を楽しませてくれる。
静かに流れる清流は上高地を思い出させたほど。
ゲート 清流
高橋の集落は空き家が多いようだ。
どこも草が生い茂っている。
ウツボグサが無造作に咲き乱れ、僕は何度も足を止めた。
犬切峠への道に合流し左折した。
以前に、和名倉山へ行った時に歩いた事がある道だが、意外と時間がかかってしまった。
道端にはキリンソウやノリウツギが咲いていた。
左折 新犬切峠
帰り道、峰さんは途中で車を止め、沢登りをするという。
藪こぎで疲れた僕は車の中で待つ事にした。
道端の花を撮ったり、峰さんから借りた田島勝太郎著「奥多摩」を読んだりして時間を潰した。
いつの間にかウトウトしていると、まっ黒でビショビショになった峰さんが帰ってきた。
峰さんがどんな沢登りをしてきたのかは僕の想像をはるかに越えていた。
いつか僕も沢登りをやることになるのだろうか?
同行していただいた峰さんありがとうございました。