特別編

第二話 アイラブ!広島

登場人物紹介 首都高速用語解説

前回までのあらすじ…。
有休の許可が出た日にドラッグストアで精神安定剤を買いました。

特別編とは?
「決断の時」というタイトルで始めることになったこの企画。
一番話したいことまで書くのにかなり時間がかかりそうなので先に書くことにしました。
旅の記録
上板橋22:12→池袋→22:27 22:30→護国寺→22:35 22:44→
有楽町22:59 23:07→東京23:10 23:43 快速ムーンライトながら→
大垣6:51 7:02→米原→7:39 7:50→野洲→8:26 8:32 新快速→
姫路10:31 11:04→岡山12:25 12:43 快速→広島15:13

1997年11月19日(水)曇り
ついに、仕事を終わらせて広島への旅が始まった。
「ムーンライトながら」は東京駅を23:43定刻に発車。
ゆっくりと滑り出した。広島では何が待っているのだろう?
外は漆黒の闇。僕は眠りについた。
途中、静岡と豊橋で目が覚めたが、昔の急行形車両と違いリクライニングシートが気持ちいい。昔、18時から席取りのために並んでいた時のことが懐かしい。

1997年11月20日(木)
名古屋で後ろ3両を切り離すと空が白み始めてきた。
朝食をとり、MDを聴き始める。流れてきたのは徳永英明の曲だ。
「そういえば旅はいつも独りだったなあ」
いつも聴いている曲なのに、新鮮な感じで聴けたので持ってきて良かったと思った。
岐阜県に入ると明るくなってきた。
大垣で普通列車へ乗り換えて、野洲で新快速に乗り換える。
車内は通勤客で満員なので座れなかった。

他の乗客は働きに出かけるのに、僕は旅に出かけるのでなんだか自分だけ浮いた存在のように感じた。
大津は滋賀県の県庁だけあってかなりの人が降りたがまだ座れない。
京都に近づくと会話の終わりに「〜おはん、〜おへん」と方言が聞こえ、遠いところまで来たなあと実感した。
京都では車内のほとんどの乗客が下車したのでやっと座ることができた。
京都を出ると意外と工場が多いのにびっくり、これで京の街の美観を保つことができるのだろうか?
淀川を渡ると、大阪に着いた。
8年前には無かったのに、空中庭園ビルという、二つのビルの上に板が乗っていて積木のようなビルができていた。
尼崎、神戸を過ぎると海が見えてくる。
周りは誰も知らない人ばかり。
徐々にその土地の色に自分が染まっていくのを感じる。
旅先の町で何か新しいできごとにでくわしたり、物語が始まることは「旅に出て良かった」と実感させる。
六甲山が見えてくると阪神淡路大震災後、初めて見る街並みにドキっとする。
いたるところにクレーンが立ち並びどこもかしこも建設ラッシュだ。
崩れた家は数軒しかなく、こんなにも復興が早いとは思ってもみなかった。
三宮を過ぎて姫路に着く。駅そばで「てんぷらそば」を食べる。
汁の色が黄色くて味が関東よりまろやかだった。
三石駅前には大きな煙突と工場が立ち並び異様な光景だ。
近くの人に聞くとそれは備前焼の窯だという。なるほど。
山は黄と赤でほんのり色づき、田は稲刈りが終わり、冬の到来を感じさせた。
上郡では智頭急行という新しい路線ができていて和気では片上鉄道が廃止されていて、旧ホームは雑草が生い茂っていた。
僕が前に来たときは気動車が来て賑やかだったのに、今は嘘のように静まり返っている。
万富はおもいろい駅名で幸せになりそう。でもキリンビールの工場があるだけで、ビールがベルトコンベアーで運ばれること以外に見るものが無い。
姫路からずっと乗っていて気になっていた女子高生はずっと寝ていたが約1時間後に瀬戸に着いて降りた。
きっと朝早く起きて電車に乗り遅れないようにしているのだろう。ごくろうさんです。
方言が変わってきた。
そうです。⇒そうじゃけえ(ん)。教えています。⇒教えとるんじゃけん。
僕はこの広島弁が大好きじゃけん?
普通列車を乗り継ぎ広島にやっと着いた。

広電の後ろに乗ったらだんだん混んできた。
目的地の袋町に着いたが荷物が邪魔でなかなか降りられない。
ノロノロしてたら、出口のドアがピシャっと閉まってしまい、仕方なく次の停留所で降りて、袋町に歩いて戻った。
次からは一つ前の停留所で前に行っておこう。

ビジネスホテル高田屋が今夜の宿。
ホテルに荷物を置いて、福屋デパートへ行った。
そこのB1に「みっちゃん」というお好み焼き屋がある。
デパ地下の一角にあるお店だが、ガイドブックに載っている店である。
1,050円のスペシャルを頼む。
皮を薄く伸ばして、キャベツと牛肉を乗せる。
もう一つ生地を作って、そばを乗せておく。
しばらくしたら水をかけてひっくり返して、まんべんなく火が回るようにコテを入れる。
焼けてきたら二つを一緒にして本体を作る。
卵を焼き、その上に本体を乗せる。
ソースを塗って青のりをかけたらできあがり〜。
ソースが甘くてうまかった。生地が薄いので粉っぽくない。薄いといっても熱で膨れる。帰りにお好み焼き材料セットを買った。家でも試してみるつもりだ。
本通に出ると出店が並んでいた。とうもろこし、おもちゃ等昔懐かしいものばかり。
今日はたまたま、年に一度のエビス講という祭りなのだそうだ。
その通りに永井紙屋がある。江戸時代には殿様に紙を献上していたそうだ。
中に入ると、色々な細工が施された和紙が並んでいる。
中には○万円する和紙もある。
広島城に行くため、タイヤで動くアストラムラインという地下鉄に乗った。
城北で降りて、広島城へ向かう。
ライトアップされた天守閣がきれいに浮かび上がる。

今は大河ドラマの毛利元就博をやっているようだ。
平和公園へ向かうと、広島SOGOがあった。大きくモダンな造り。
原爆ドームもライトアップされていてなんともいえない美しさだった。
やっぱり広島が一番好きだ。
慰霊碑の灯りが揺れながら燃えている。僕はお祈りをした。
学生がビートルズを歌っている。
僕は爆心地(グラウンドゼロ)のT字橋の上に立ち、精神安定剤を手にする。
「…」
「…」
「くっ…」
「だめだ、死ねないよう…」
死ぬ勇気すら無い自分が情けなく、涙が流れ出す。
「クソーーー!」としわがれた声で叫んだ。

次回予告
死ねない自分のことを一晩寝て考えました。
第三話 抜け殻のような人生の始まり