誕生編

第二話 ダンゴムシとベンジョムシ

登場人物紹介 首都高速用語解説

前回までのあらすじ…。
1971年7月2日に生まれた僕。物心ついた時、祖父の会社の2階に住んでいました。

誕生編とは…?
生まれてから卒園するまでのお話しです。

2階にもう一つ玄関があり、別の住まいがあった。
そこには、祖父と何人かの息子たちがまだ独立せずに一緒に住んでいた。
3階は、鉄骨コンクリート造の屋上になっていて祖母が作った家庭菜園があり、長ネギやナスなどが栽培されていて、それらは時々うちの食卓にも上った。
山形で畑仕事をしていたときの名残らしい。
人間は結局、どこへ行っても土から離れられないということだ。
他に太陽熱温水器と物置が2つあり、そこは僕の絶好の遊び場となっていた。
家庭菜園の土をほじくれば、ダンゴムシやベンジョムシ、ミミズなどの昆虫がたくさんおり、ほじくりまわして祖母に怒られたこともあった。
ダンゴムシは足のたくさんある虫で、棒でつつくとくるっと丸まりそれこそお団子のようになった。ベンジョムシはダンゴムシのように足がたくさんあったが、つついても丸まらずコソコソと逃げるだけだった。
ダンゴムシとベンジョムシの違いを説明できる人は少ないと思う。

周りの道はほとんど舗装されていたし、近くの空き地へ行くのは大冒険だった。
だから、僕の幼少期の最初の頃の遊び場は屋上だった。
屋上で遊んでいると、下のトイレに行くのが面倒なので、排水口に立ち小便を良くした。
下には車が行き交うのが見え、それはそれは気持ちの良い立ち小便だった。
(だから今でも山での立小便は気持がいい)
時々、祖母にみつかって怒られたりしていたが、そんなことは気にせずほぼ毎日やっていた。

ある日寝る前に天井を見上げると、茶色い板が変色しているのが見える。
「あれな〜に?」と母に聞くと、「雨漏り」と教えてくれた。
僕は子どもながらに、とても悪いことをしたと後悔した。
どう考えても僕の力では直せそうにないので、僕の小便が原因だということはずっと秘密にすることにした。
一生秘密にしなきゃいけない事情ができ、体がズシリと重たくなった。
僕は小便が配水管を溶かしたと思い込み、小便の溶解能力を恐れた。
高校の化学の時間で尿素の成分が分かるまで、小便はプラスティックを溶かすと思い込んでいた。
以後は、自宅のトイレで必ずするようにした。
そして不覚にも、トイレで小便をする夢を見て、何度か寝小便をしてしまった。
当時は洋式の便器は珍しく、自宅はまだ和式の便器と小便器のふたつの便器があった。
僕は天井に付いたシミを眺めながら眠ることが多くなった。
あのシミはいつになったら消えるのか?
どうやったら消えるのか?
そればかり考えていた。
僕の心配性の性格はこの事件に由来するところが大きいようだ。
そうやって人間は少しずつ性格が決まっていくらしい。
シミを眺めているうちに、「人間って死ぬのかな?」と思い母に質問してみた。
僕はダンゴムシやベンジョムシを毎日のようにつぶしていたし、家庭菜園の隅のほうには干からびて白くなったダンゴムシがゴロゴロしていたから、死ぬってどういうことだろう?と気になっていたのだ。
「おばあちゃんも、おじいちゃんも、お父さんも、お母さんも、かずも、みんな年を取れば死ぬのよ」
僕は突然目の前が真っ暗になった。
明日には誰かが死んでいるかもしれない。
僕はいつまで生きられるのだろう?
まだ死にたくないよ〜。
死の恐怖が、真っ暗闇の布団の僕に襲いかかり僕は泣き出した。
エ〜ン、エ〜ン。怖いよ〜。

僕はその日以来、死ぬってどういうことだろう?と考え出した。
屋上の家庭菜園のダンゴムシやベンジョムシをつぶしながら考えた。
それらのムシをつぶすと、白い体液のようなものが出て、家庭菜園を囲っているブロックは白い体液だらけになっていた。
僕は祖母にまた怒られると思い、土で一生懸命証拠隠滅をした。

(屋上の左端が小便ポイントでした。今でも配水管が取り付けられています(笑))

次回予告
少し成長した僕は近くの空き地まで、行けるようになります。
第三話 初めての迷子