青春編

第九話 変質的なアイ

登場人物紹介 首都高速用語解説

前回までのあらすじ…。
後頭部にケシカスが投げつけていた犯人はスドウでした。
思春期の僕は顔がニヤケてしまいます。

青春編とは…?
学生時代のことについて書いていきます。

1985年
ある日の休み時間。
「昨日の風雲たけし城見た?」と友達のマイケルと話をしていると、あの子が近づいて来て「ねえ、ネクタイ貸して〜」といつもの明るい声で言う。

僕の中学校の男子はブレザーにネクタイ、女子はリボンだった。
いわゆる一般的な学生服のガクラン、ツメエリ、セーラー服では無かった。
不良達はほどけないくらいネクタイの結び目を小さくしていた。
僕は真面目さをアピールするために普通の結び目だった。
入学した時、ネクタイはなんだか大人に近づいたみたいで、嬉しかった。

あの子は僕の正面に回りこむと、ネクタイをはずし始めた。
あの子の異常接近で、僕はドキドキ…。
「今朝納豆食わなきゃ良かったなあ」などと、余計な心配をしてしまう。
ロングでもショートでも無い、肩にかかるくらいの長さのあの子の髪。
やや巻いてある髪からはシャンプーなのかリンスなのかなんともいえない馨しい香りがした。最近流行の朝シャンだろうか…。
あまりの緊張で体が固まってしまいそうだ。
あの子はネクタイをはずすと、僕の後ろへ回った。
ん?なんだ?と思っていると、あの子は突然僕の首にネクタイを巻きつけたかと思うと、そのネクタイで首を絞め始めた。
え〜?いきなり何すんだ?
ぐ、ぐるじい〜。
最初はびっくりしたが、あの子は僕のことを本気で絞め殺そうとしているのでは無く、やんわりと絞め付けている。
その首の絞めかたからあの子のやさしさが伝わってきた。
そのうち僕は好きな子に首を絞められるのって気持いいなあと思い始めた。
S(サド)やM(マゾ)という言葉や行為を知らなかったが、このことをきっかけに僕はMに目覚め始めていたし、あの子はSに目覚めていただろう。
とにかくいじめられることで、あの子の愛を感じてしまったのだ。

最近の僕の行動を見て「浮気しないで!私だけを見て!浮気したら首を絞めるわよ!」というあの子の声が聞こえてきそうだった。
思えば最近、女子のトミタ、トクダ、オオシマ、スドウと仲良くしている。
あの子はそのことが面白くなかったらしい。
「本当に好きなのは君だけだよ…」
そのことを分かってもらいたくて、あの子のやりたいようにさせた。
あの子の嫉妬がなにより嬉しかった。
あの子になら絞め殺されてもいいと思った。
お互い言葉は交わさないけれど、すべてを理解しあっていた。
マイケルはさっきから目をまんまるくしていたが、どこかへ行ってしまった。
周りの生徒が「変態カップル」と噂しても耳に入らず、僕はあの子に首を絞められ続けた。磁石のSとNが引き合うようにぼくらはこうなる運命だったのかも知れない。
その日以来、休み時間になってあの子にネクタイを貸すと、あの子が僕の首を絞めるという行為が続いた。
そこにはあの子の愛の世界があり、僕はその変質的な愛の中へ溺れていった。

次回予告
成績優秀な僕を妬むヤツが登場します。
ただのいじめっ子だと思っていましたが…。
第十話 ガイト