第九話 初月給

登場人物紹介 首都高速用語解説

前回までのあらすじ…。
父の会社を辞めた日に東池袋の会社に勤務することが決まった。
仕事は首都高速のPAを保守することだった。

1991年9月25日(水)曇りのち晴れのニュース
☆JR山手線「魔の隙間」に転落防止カバー。
車両と車両の間の隙間にカバーを取り付けて、人が挟まれないようにしました。
ゴムで出来ていて、急なカーブでも耐えられるようにできています。

八潮PAに行くのは今日で2回目。
相変わらず大型バスやトラックがたくさん止まっている。
通用門にハイエースを止めて、女子トイレの点検。
「トイレ点検中」と書いた白板を立てかけてトイレブースの鍵を一つずつ点検していく。何回もドアをバタンバタンと開け閉めしているのでかなりうるさい。
次々とブース(個室)に出入りして点検するK主任は変質者のようで滑稽だ。
トイレの中に入る女性はさぞびっくりすることだろう。
全部のトイレブースを点検するのにだいぶ時間がかかってしまった。
ドアがはずれそうなものがあったのでK主任に報告するがやはり直せないらしい。
洗面所の水も全部出るか確認する。
蛇口に手を近づけると自動的に水が出る最新の設備だ。
この作業はなかなかおもしろい。
外へ出て、女性とすれ違うとみんなびっくりするが僕等はヘルメットを被っているので、「工事の人か?」と納得するらしい。
「意外と女性のトイレって汚いだろ?」
K主任の意見に反論できなかったが、そんなことは口に出して言わないでほしい。
このトイレは財団法人の道路協会が管理しているので、言いたい放題である。
こんなオヤジにはなりたくないなあ。

身障者用トイレでインターフォンの点検をして写真を撮る。
ほんとにこんなことに公団がお金出してるのかな〜?
次に男子トイレの点検をする。
男子も女子と同じように点検する。
使用中のブースがあり、中の人が出てから点検をするがやはり終わった後すぐは臭い。鼻をつまんで鍵の点検をする。
ここでまたK主任から一言…。
「牛肉食べると臭いんだよな…」
あんたはそんなことまで分かるのか?と、つっこみを入れたくなってしまったが、仮にも上司なので、「そうなんですか、へ〜」と納得してみせた。
次に駐車場の点検をする。
駐車場を仕切る収納式の柵をバリカーというのだが、それが曲がっていてこのままだとかえって危険なので、撤去することにした。
K主任は「バカな大型トラックがぶつけたんだろう…」と推測する。
ドライバーでバリカーの撤去完了。
だがネジが曲がっていたのでちょっと大変だった。
証拠写真を撮りやっと仕事らしい仕事ができた。
食堂で定食を食べて、ハイエースの中で14時までお昼寝。
2時間も昼休みを取っていいのだろうか?

6号三郷線から中央環状線、埼玉1号川口線へ入っていく。
新井宿という出口で高速を出て、Uターンして高速に入り左に曲がっていくと川口PAに着く。八潮PAと同じように大型トラックやバスが何台も止まっている大規模なPAで、食堂もある。
ヘルメットを被って女子トイレを点検する。
バスから何十人もの団体がやってきてトイレがたちまちいっぱいになるので僕等は外に避難した。男子トイレ、身障者用トイレ、駐車場を点検して基地へ戻った。
環状線を使うと遠回りのうえ、渋滞に巻き込まれるので、途中から環七を走って、板橋本町(上)から5号線に乗って帰った。
基地に帰るとマリさんが笑顔で迎えてくれる。

マリ:「おかえり〜、今日給料日だけど来月と一緒にする?20日締めだから2日分だけ出すことも出来るわよ」
「え?そうなんですか?じゃ2日分でいいからください」
マリ:「そう言うと思ったから用意しておいたわよ」
「わ〜い、ありがとうございます」
マリ:「お礼は所長に言ってね」
僕は所長の机まで行き頭を下げた
「所長!ありがとうございます」
所長:「おう!良かったな」
封筒の中には16,000円と書かれた明細書が入っていた。
1日8,000円という計算だ。
僕の初月給はたったの2日分なので少なかったけれど、「働いた〜」という実感があり嬉しかった。
これで何かうまいものでも食おう。

第十話 駒形PA

次回予告
駒形PAにも美人中国人が働いていた。
僕は少しだけK主任を見直す。