第六話 箱崎PA

登場人物紹介 首都高速用語解説

前回までのあらすじ…。
父の会社を辞めた日に東池袋の会社に勤務することが決まった。
翌日、会社へ行き汐留維持事務所で無事作業完了。しかし暴言を吐いてしまう。

1991年9月20日(金)曇りのち雨のニュース
☆ノースウェスト航空火災

「おはようございます」
所長は昨日のことは忘れているようだ。良かった。
今日からK主任と一緒にPAを回る。
高速に乗って最初に向かったのは箱崎PA。
箱崎インターは3つの路線が1つになるので首都高で一番混むところだ。
その下にロータリーがあり千葉寄りに箱崎PAがある。
トイレと電話ボックスだけの小さなPAで近くに公団のパトカーやJAFの車のガレージがある。
K主任は建物を一通り覗いて、トイレ掃除を始める。
僕も手伝いながら、掃除の仕方を教えてもらう。
便器の清掃は汚い作業だ。目を背けながらブラシで擦る。
トイレットペーパーを補充して作業を終えるとK主任は非常階段を降りる。
踊り場に物置があり、K主任は鍵のかかった扉をこじ開ける。
「こら!何やってんだ!」
「あ、Kさんすいません、すいません」
「寝てばっかりじゃなくてちゃんと掃除しろ!」
寝ていたのはチンさんといって中国人で箱崎PAの清掃員だ。
「まったく○○○はどうしようもねえな」(差別的な発言)
チンさんは眠い目を擦りながらPAへ行こうとするが
「もうPAは掃除したよ」とK主任に止められる。
「新富町は行ってるのか?」
「はい、行ってますよ〜」
3人で地上に降りてK主任はゴミの整理をチンさんにやらせる。
K主任と僕は車に戻って、新富町PAに向かう。
僕はいきなり激しいやりとりがあって、ちょっとびっくりした。
「どうしようもないヤツだろ?でも中国人で免許持ってるのあいつだけだし、日本人はこんな仕事誰もやらないからクビにできないんだよなあ、時給2,400円でよお1ヶ月に換算すると俺より給料いいんだから頭にくるよ」

新富町PAは非常駐車帯の脇に小さなトイレが男と女一つずつあるだけの小さな施設で、都心環状線で唯一のトイレだ。
このトイレはS建設で最近作ったらしくまだ新しい。
K主任は車を降りてトイレの様子をチェックする。
「ここはそんなに客が来ないからだいたいきれいなんだ…、ただトイレットペーパーがすぐ無くなるんだよなあ」
ここのトイレットペーパーは紙を取り出しにくく、途中で裂けてしまうのでビリビリに破けたペーパーが便器の周りに散乱している。
ペーパーホルダーが縦長のスライド式でトイレットペーパーの上下を逆にすると、なかなかペーパーが出てこないのだ。
K主任はペーパーホルダーに手を突っ込んで、トイレットペーパーを取り出して、上下を直して挿入する。清掃員がちゃんとやっていればこんな苦労はない。

新富町PAのすぐ先が新富町出口だ。
K主任は「ちょっと寄り道な」と言って有楽町方面へ車を走らせる。
車が止まったのはSONY本社ビル前。
K主任はここで故障した電化製品を修理に出すという。
「おいおいあんたもチンさんと変わらんぞ!」
K主任との仲が悪くなると仕事がやりにくいので所長には内緒にしておこう。
僕は大人の付き合いを少しずつ勉強する。
再び高速に乗り、2号目黒線から荏原出口で中原街道に入る。
この道路は朝のラッシュ時にセンターラインが変更になって、上り車線が増える珍しい道路だ。
環八の手前を右折して細い道を行くと白いビルの前に止まった。
社名の入ったでかい看板があり、自社ビルのようだ。
ここがS建設の本社。
隣には「人形のプーペ」という看板があり環八がすぐ近くで立地条件がいい。
中に入ると意外と狭く、4坪程度しかない。
事務員のNさんと現場監督のMさんがいて「はじめまして」と挨拶する。
「この子かい?期待の新人は?ま、頑張れよ」
「はいよろしくお願いします」
他の人は現場へ出かけていないようだ。
建設会社の事務所は従業員が現場へ直行直帰することが多く、昼間は特に閑散としている。
再びK主任とハイエースに乗って、中原街道の城南信金の前で止まる。
「また寄り道か?」と思ったら、K主任は「TIME BOY」というタイムカードの機械を修理に出しに行った。近くに代理店があるらしい。
高速に乗って、また箱崎を通って6号向島線から堀切と小菅を通って、埼玉6号三郷線へ入っていく。
八潮出口で高速を出て、交差点でUターン。
再び高速に入って、八潮集約料金所を過ぎたらすぐに左折して八潮PAに入っていく。このPAは意外と大きくて、食堂があり大型トラックやバスがたくさん止まっている。
端のほうに車を止めて、食堂で食事をする。
中は作業服を着たトラックドライバーがたくさんいて、憩いの場になっている。
ハンバーグ定食がうまかった。
「意外にうまいだろ?」とK主任も満足したようだ。
車の中で1時間昼寝してから仕事を始める。外回りは自由にサボれる。
2人で排水溝の蓋(グレーチング)を上げて、排水マスから排水ポンプを下から引き上げる。これが仕事だったようだ。

今度は中央環状線に入り、湾岸線から有明で国道に出てUターンして、また高速へ乗り辰巳インターへ入る。
その途中に駐車場がありそこが辰巳(A)PAだ。
駐車場はけっこう広いが車は少なく、閑散としている。
K主任は車を止めて、トイレの奥の白い物置のような建物に近づく。
コンコンとK主任がノックする。
「は〜い」という女性の声が聞こえてきた。
中からチョウさんという中国の女性が出てきて「Kさ〜ん、待ってたわ〜」
と何やら怪しい雰囲気。
チョウさんはここの清掃員で、K主任とはかなり仲がいい。
確かにチョウさんは美人で、K主任がメロメロなのもうなずける。
30分くらい二人で仲良く話しをしていて、楽しそうだ。
「箱崎とはえらい違いだなあ」と思う。
トイレットペーパー、水石鹸、ガラスクリーナーの補充をK主任から頼まれて、ハイエースの中から持ってきた。
ここでようやく二人の話が終わり、基地へ帰ることになった。
車の中でもK主任はご機嫌で、早稲田や明治の校歌を熱唱していた。

第七話 美人OLのマリさん

次回予告
志村PAを回って基地内で美人OLのマリさんと初めての昼食。ドキドキ〜。