第四話 初出社

登場人物紹介 首都高速用語解説

前回までのあらすじ…。
父の会社を辞めた日に東池袋の会社へ行き面接を行った。
そして翌日から勤務することが電撃的に決まってしまった。

1991年9月19日
6畳の部屋で目覚ましがジリリリ…と鳴って飛び起きる。
まだ6時だが今日から新しい会社なので弁当を作る。
キャベツ炒めと玉子焼き。
ワイシャツを着てネクタイを締める。中学生からネクタイなので慣れている。
スーツを着て家を出る。外はちょっと寂しい雨が降っていた。
10分ほど歩きイトーヨーカドーの前を通ると上板橋駅に着く。
「これから毎日ここを通るんだな」
学生の時以来久しぶりに定期券を買う。

3日後にはどうなっているか分からないが、これで1カ月働かないといけないと自分に言い聞かせた。
東上線の一番前の車両に乗る。中板橋での通過待ちが煩わしい。
池袋までは見慣れた風景。
池袋に着くとダッシュする。
改札を抜けて階段を下り、有楽町線の改札を通りさらに階段を下る。
次の駅で降りないといけないので、出来るだけ発車間際に乗車する。
中まで入ると降りられなくなる可能性がある。
ホーム側を向いて尻から入る。学生時代に丸の内線で通勤電車は慣れている。
有楽町線が和光市まで行くようになってからえらい混みようだ。
うう〜息ぐるじい〜。
約2分で東池袋駅に到着。満員電車から解放される。
これがサラリーマンかあと変な納得をしながら改札へ向かう。
ここで下車したのは僅かに2,3人だ。
薄暗い通路を飯田橋方面に歩き一番奥の出口から出る。
外に出ると空気がうまい。路面電車がゴロゴロ…と走っていく。
「ああ吉野家あるじゃん。朝食あそこでもいいな」
高架下を歩いて行くと、S建設雑司が谷基地に到着。

首都高では車両がある場所を基地と呼んでいるらしい。
昔、5号池袋線が北池袋で止まっていた頃、この上が雑司が谷集約料金所でここはその料金所の事務所だったらしい。その後5号池袋線が高島平まで延びると料金所は南池袋PAになり事務所は護国寺に移ったらしい。
そして今はPAの保守の仕事をするために、ここに事務所が作られS建設が下請けで仕事をすることになったようだ。

ドアを開けて「おはようございま〜す」と元気良く入って行く。
部長が近づいてきて「君の席はここね」と机に案内される。
ねずみ色の事務机というやつだ。
「え?机使ってもいいんですか?」
まだ入ったばかりの僕に机があることが驚きで、滅茶苦茶嬉しかった。
「うう〜これがサラリーマンかあ」としみじみした。
机の上にはノートが一冊置いてあり、僕の名前が書いてあった。
このノートに気がついたことを書くように指示される。
K主任に更衣室に案内され、ベージュの作業服に着替えるよう言われ空いてるロッカーにスーツを入れて着替えた。
事務室に戻ると、「特記仕様書」という公団から支給される資料を読むように言われたが、知らない地名と数字の羅列に法律のような堅苦しい文章でまったく理解不能だった。
まあそれでもとりあえずの仕事はその資料を読むことみたいなので、読んでるフリをしながらページをパラパラとめくっていった。
上には高速道路が走っているので、時折「カコーン、カコーン」という音がする以外は静かな事務所。
ところが突然一本の電話が鳴り、美人OLのマリさんが電話を取り所長につなぐ。
僕は電話を会社で取ったことが無いので電話のベルは不安になった。

この電話機は性能が良く、電話を取って保留を押すと「所長、1番に○○さんからお電話です」と美人OLのSさんが言うと、所長の手元の電話の1番のボタンを押すと所長は動かずに電話を取れるという仕組みなのだ。
世の中には随分便利な物があるなあと感心した。
ちなみに電話機は所長、事務員、作業員、予備の計4台あり、作業員は3人いるが電話が机の上をクルクル回るようになっていて、使いまわせるようになっている。

所長は厳しい表情で応対する「はい、分かりました。すぐに係りのものを向かわせます」
電話を切ると立ち上がり「K(主任)さん緊急出動だ!汐留維持事務所へ向かってくれ!ポンプ室が浸水してるそうだ」
「それからK君(僕)も一緒に行ってくれるか?これからKさんとコンビを組むことになるからね」
僕は「はい!」と返事をして席を立ち、K主任の後を付いて行く。

今回から登場人物紹介首都高速用語解説を載せます。
話の中で分からないものが出てきたらクリックしてみてください。
次回からは上のほうから入れます。

第五話 出動せよ!汐留維持事務所

次回予告
面接では簡単な仕事だと言われたのに、けっこうきつい仕事が待っていた。