第二話 公共職業安定所

前回までのあらすじ…。
町工場での仕事に嫌気がさし父に退職することを告げた。

1991年9月18日
不景気の兆候が見られると言っても、周りの人間は誰もそんな心配はしていない。
今の日本には成長以外ありえなかった。
もしかしたら、人々はバブル景気の余韻に浸っていたのかも知れない。
または現実から目を背けていたかったのかも知れない。
僕は不景気の足音を敏感に感じ取り「今しかチャンスは無い」と思い
父の会社を辞めて、その日のうちに豊島区のハローワークへ向かった。
池袋から徒歩約10分、薄暗い公園の前にその建物はあった。
最近、公共職業安定所からハローワークへ名称を変更したらしい。
オレンジ色の文字が真新しい。
小汚い建物の2階へ上がると、2,3人の人がいるだけで閑散としていた。
棚にはクリアファイルに求人募集の案内がいくつも入っておりそれが業種別に分類されていた。
僕は受付の人に「あの〜仕事探してるんですけど…」と尋ねた。
申し込み用紙に記入するように指示され、住所や電話番号などを記入した。
希望職種の欄には掃除が好きだったので、「清浄」と記入し、受付に提出した。
受付の人は「セイジョウですか?」と不思議そうな顔をする。
「あ!いえ、清掃です」
緊張していたのか字を間違えてしまった。
こんなことで無事に就職できるのだろうか?
「あちらで仕事を選んでファイルを持ってきてください」
パソコンで検索してくれるのかと思ったら、意外と原始的な検索方法だった。

勤務地:南池袋PA他多数。
仕事内容:駐車場、トイレ等の定期的な清掃。
勤務時間:8:30〜17:00応相談。週休二日制。
給与:日給7,000円。
会社設立:昭和…年、資本金…万円。
会社名:S建設株式会社。
担当:S пc。
最寄駅:東池袋徒歩3分。

会社帰りに池袋で遊びたかったので地理的条件はクリア…。
自宅の上板橋から30分で通勤できるな…。
最近流行の週休二日だし、トイレ掃除が気になるけどまあこれでいいや…。

このファイルを受付に持っていくと、受付の人はその会社に電話をした。
電話が終わると受付の人はこう言った
「今すぐ面接をしたいそうなので行ってください、場所は東池袋です」
僕はファイルのコピーをもらうと外へ出た。
ファイルには地図が書いてあり
「高速の下を飯田橋方面に歩いて白い建物が目印です」とある。
僕はサンシャイン60のビル風に吹かれながら、高架下を飯田橋に向かって歩き始めた。

第三話 面接

次回予告
会社を辞め仕事を選んだその日にいきなり面接。
心の準備もできていないのに就職できるのか?