幻想編

最終話 チョンさんの引越し

登場人物紹介 首都高速用語解説

前回までのあらすじ…。
居酒屋を改築して、その店で働くことになった僕。
私生活では泥棒に2度も入られますがその泥棒は捕まりました。!
好きだったむつみさんが自殺未遂をしてしまいました。
気になる女の子のお嬢様との恋はあっという間に終局してしまいます。
送別会の前に玉ちゃんと池袋でデートをして、送別会に臨みますが変な嫉妬心が…。

幻想編とは…?
居酒屋で働いていたときのことについて書いていきます。

2000年3月26日(日)

実のところ韓国の姓の数は同じ漢字語圏の中国や日本に比べると極端に少ない。
ほとんどの人が「イ」「キム」「チョン」の姓の3種類だ。
韓国の街中でキムさ〜んなどと呼ぼうものなら、それこそ何人ものキムさんが振り返るらしい。
そういうわけで、今日はチョンさんの家からチョンさんの家に引越しなのだ。
え?当たり前だって?
ところが、正確にはチョンさんの家からチョンさんの友達のチョンさんの家に引越しなのだ。
え?よけいにややこしい?
つまり、玉ちゃんの家からチョンさんの家に荷物を運ぶわけ…。
分かった?
とにかく、玉ちゃんもチョンさんも親戚ではないけれど、同じ姓なのだ。
「チョンなんとかっていう韓国の元大統領は玉ちゃんのお父さん?」と質問したら、ゲラゲラ大笑いされたこともあった。

車で玉ちゃんのいる赤羽の寮へ行く。
ピンポーン!
…!
ガチャ!
知らない女性がドアを開けた。
ドキッ!
チョン:「アニョハセヨ」
かず:「アニョハセヨ」
かず:「チョウンペッケスンニダ」
チョン:「すごい!韓国語うまいですね〜」
かず:「ええ、まあそれなりに。いい先生がいたものですから」
チョン:「私はチョンといいます」
かず:「かずといいます。よろしく」
チョンさんは「玉ちゃ〜ん」と言って奥に行ってしまった。

しばらくして、眠たそうな顔をした玉ちゃんが乱れた髪を梳かしながらパジャマ姿でやってきた。
それがなんとも色っぽい。
ドキッ!
玉ちゃん:「あ、おはよ。びっくりした?」
かず:「したよ〜。やっぱり玉ちゃんのいたずらだったのか〜」
玉ちゃん:「アハハ、そうなんだけど〜今日はあの子の引越しをしてもらいたいよ」
かず:「玉ちゃんのは無いの?」
玉ちゃん:「私のはもう湯河原に送ったよ」
かず:「そう、じゃチョンさんと荷物運んでおくから、早く着替えなよ」
玉ちゃん:「あ、そうだったね」

荷物を運び、3人で車に乗った。
そんなに大きな荷物は無かったので、荷物運びはすぐに終わったのだ。
チョン:「センプキありがとございます」
かず:「え?ああ扇風機ね。使わない物だから、扇風機も喜んでるよ」
玉ちゃん:「とりあえず十条駅に行ってくれる?お兄様!」
かず:「OK!ここからすぐだ」
十条駅前に着くと、2人は車を降りて不動産屋へ道を聞きに行った。
その2人のナビで車を進めるが、狭い路地で迷ってしまう。
また十条駅に戻ってしまった。
かず:「ちょっと〜、しっかりしてよ」
玉ちゃん:「ゴメ〜ン。おかしいな」
チョン:「かずさんの運転が悪いからよ」
かず:「はあ?俺のせい?まあそういうことにしとくか」
アハハハ…。3人で大笑いした。
でも笑っただけでは何も解決しない。
僕らはスタート地点から再び始めた。
曲がり角に着くたびに、通りかかった人を見つけて道を聞いた。
曲がりくねった狭い道を進み、ようやく古いアパートに着いた。
今どきの日本人が住まないようなアパートだった。
おせじにも立派とはいえない。
昔ヒットした名曲「神田川」を彷彿とさせる。
東京にもまだこんな場所があったんだなあ。
とにかく、日本は外国人にとっては住みにくい国には違いない。
荷物を運び込み、チョンさんにお茶をご馳走になる。
チョンさんは韓国の大学院でマスメディアが人々に与える影響について勉強していたそうだ。
僕ら3人はかわりばんこに写真を撮った。
玉ちゃんと会えるのも今日がほんとにほんとに最後だから。

行きは30分もかかったのに、帰りは5分で赤羽に着いてしまった。
道を知らないって恐ろしい。
台湾料理のお店に入り、おこげ料理を注文した。
玉ちゃんはおこげが大好物だった。
今日で最後なのに、僕らは素直になれなかった。
お互いの悪口ばかり言い合った。
玉ちゃん:「昨日は一緒に帰ろうと思ったのになんで先に帰ったの?」
かず:「いや、まあ、その〜」
玉ちゃん:「がっかりしたよ」
かず:「なんだか僕といる時より楽しそうにしてたじゃん」
玉ちゃん:「それは、私の送別会なんだもん」
かず:「そうだけどさ、そういうの俺は我慢できないよ」
玉ちゃん:「上野君とツーショットで撮ったこと、妬いてるの?」
かず:「俺はそんなに心の狭い人間じゃないよ、ただちょっと羨ましいっていうか…」
その後も悪口の言い合いは続いた。
でもほんとのことを言うのではなく、冗談でからっかてるだけだ。
お互いに。
それがけっこうおもしろい。
玉ちゃんは時々僕の話を聞かずに「このおこげおいしい」と言って僕が困っている様子を見てゲラゲラ大笑いした。

寮の前に車を止め、僕は自分の夢と玉ちゃんを激励することを書いた手紙を玉ちゃんに渡す。
かず:「beautful lifeの最終回が終わってから見るんだよ」
玉ちゃん:「うん、ありがとね」
玉ちゃんはやはり別れがつらいらしく、それ以上喋らなかった。
目には涙がたまり、今にも溢れそう。

TBSドラマ beautful lifeの最終回は涙必死なのが分かっていたので、その後に手紙を読んでもらったほうが、より感動すると思ったからまた妙な演出を提案したのだ。
もうこの前、お別れはしているし、涙もたくさん流したから、今日は涙は無し。
それにきっとまた会える。
かず:「ヨウドンセイ」(親愛なる妹よ)
玉ちゃん:「オパ」(かっこいいお兄ちゃん)
そして僕は「バイバイ」と言って玉ちゃんと別れた。

beautful life
杏子が死んでしまった。
死んでほしくなかったのに…。
柊二が杏子の遺体にメイクしていて「なんでこんな冷えてんだ、お前」
と言った時。
僕の頬に涙が流れた。
ドラマで久々に泣いた。
頭の中で今までのいろんなことが混ざって、それがいっぺんに溢れ出たみたいに…。
玉ちゃんはもう手紙を読んだだろうか?
数日後に玉ちゃんは妹のお見舞いのために韓国へ旅立つことになっている。
そして帰ってきたとしても、湯河原だ。
東京からは3時間もかかる。
もう会えないかもしれない…。
でもきっと、明日の朝に電話したときは眠そうな声で「今、起きた…」という玉ちゃんの声が聞こえ、いつもどおりの日常が始まるのだ。
終わりじゃなくて始まりなんだと僕は信じたい。
玉ちゃん。
楽しい思い出をありがとう。
またどこかで会えるよね。
カクテルを作ろう! その17 カミカゼ
カクテルグラスを用意します。
ウォッカを40ml、ホワイトキュラソー10ml、ライム果汁10mlをシェーカーに入れてシェイクします。

「ナツメ社 カクテル300」には載っていませんでした。
お店では一度も作る機会が無かったカクテルです。

決断の時幻想編完結。エンディングを見るためにはjavaアプレット・MP3の動作環境が必要です。↓
エンディング