幻想編

第十八話 プライベートでの別れ

登場人物紹介 首都高速用語解説

前回までのあらすじ…。
居酒屋を改築して、その店で働くことになった僕。
私生活では泥棒に2度も入られますがその泥棒は捕まりました。!
好きだったむつみさんが自殺未遂をしてしまいました。
気になる女の子のお嬢様との恋はあっという間に終局してしまいます。

幻想編とは…?
居酒屋で働いていたときのことについて書いていきます。

2000年3月16日(木)
店長:「今日は商店街の集まりがあるから、また頼むよ」
かず:「はい、わかりました」
店長:「パートナーは玉ちゃんでいい?」
かず:「はい…」
やった〜また玉ちゃんとラストまでできる〜。
お店には僕と玉ちゃんのことはいっさい秘密。
だってバレたらどちらかがクビになると思ったから。
ひやかされるのもいやだし…。

閉店後の店内…
かず:「もしかしたら、今日で一緒に働くのも最後かもね」
玉ちゃん:「そうだね〜。さびしいよ」
かず:「またいっぱい写真撮ろう!」
玉ちゃん:「うん」
僕らはここで一緒に働いた証を残すために、たくさんの写真を撮った。
そして僕は、もう「これが最後」と言い聞かせながらシャッターを切る。
ファインダーの中の玉ちゃんはにこやかでかわいい。

父が持ってきてくれた車で、玉ちゃんを寮まで送る。
寮の前で二人とも車を降りるが、別れるのがいやだった。
なんだか、もう会えないような気がした。
僕が手を差し出すと、玉ちゃんは握手をしてくれた。
「お兄ちゃん!」
前に僕は玉ちゃんへ書いた手紙の中に「親愛なる妹へ」と書いたので、玉ちゃんの口から出たのだろう。
僕は嬉しくて涙が出そうになった。
彼女に僕のことをお兄ちゃんと呼ばせたのだ。
もうそれだけで満足だった。
嬉しくて、嬉しくて。
涙が流れ出した。

僕が車に乗り、窓を開けて手を伸ばすと玉ちゃんも手を伸ばして握手をしてくれた。
時間よ止まれ!
いつまでも、いつまでも。
ずっとこうして手をつないでいたかった。
しばらく二人とも沈黙した時間が流れた。
別れがますますつらくなるので、僕はギアーをドライブに入れ、アクセルを少し踏んだ。
僕の手から玉ちゃんの手が少しずつ離れていく。
玉ちゃん:「さびしいよ、行かないで…」
それはこれからの僕らの運命を暗示しているようだった。
手が完全に離れると、僕は手を大きく振りながらアクセルを強く踏んだ。
ドアミラーにはいつまでも僕を見送る玉ちゃんの姿が映っていた。
「さよなら玉ちゃん」
僕は玉ちゃんとプライベートでのお別れをした。
次はオフィシャルでのお別れだな…。
送別会は25日。
僕は玉ちゃんの姿が見えなくなった曲がり角を曲がった場所で車を止め、ハンドルに腕と顔を押し付けて、泣きじゃくった。
「玉ちゃん…好きだよ…」

2000年3月19日(土)
中国人料理人の陳さんが「酒飲もう!」と言うので、仕事を終えた後、私服に着替えてお客になった。
かず:「急にお酒飲もうなんてどうしたの?」
陳:「私、チーフのこと嫌いよ」
かず:「え?どうして?」
陳:「最近一言も喋ってくれない」
かず:「何かまずいことしたんじゃないの?」
陳:「あの人男が嫌いなんですよ」
かず:「まあそりゃあ誰だって、ヤローと一緒に仕事するよりは、女性と一緒のほうがいいけどな」
陳:「あの人、私の妹と不倫してるよ〜」
かず:「は〜?チーフに限ってそんなことないだろう?」
陳:「い〜や、あの人妹とはすごく仲がいいんですよ」
かず:「うん、陳さんの妹と毎日、楽しそうに仕事してるから、仲がいいのは僕も認めるけどね。だけど、この店の中で、しかもチーフの目の前でめったなことを口にするなよ」
陳:「いいんです。聞こえるように言ってるんですから」
かず:「頭使ってさ〜、もうちょっと仲良くやれよ。俺がお前のこと使ってやってるんだ、ぐらいの気持ちで働けばいいじゃん」
陳:「はい、分かりました」
その時、僕が仕事を終えた代わりに玉ちゃんがやってきた。
僕と陳さんは玉ちゃんのほうを向いて、しばらく見とれてしまう。

陳さんが僕のほうに突然向きなおして僕はびっくりする。
やべ〜、バレた?
陳:「私、玉ちゃんのこと好きよ〜」
かず:「え、そう?」
僕は冷静を装いながらも、ドキドキした。
もしこいつに僕と玉ちゃんの仲がバレたらどうなるか?
かず:「まあ、玉ちゃんかわいいしね。分かるよ、その気持ち」
陳:「そうでしょ〜、玉ちゃんかわいい。結婚したいよ」
「ブ〜〜ッ!」
僕は飲んでいたカルアミルクを少し噴出した。
かず:「おいおい、いくらなんでも、いきなり結婚は無理だろう」
僕は好きイコール結婚という陳さんの考えが理解できなかった。
そりゃ、ゆくゆくは恋人同士、結婚するものなのだろうけど。
僕にとって恋は夢で、結婚は現実だった。
いろいろめんどくさいことも起きてくる。
韓国の両親に挨拶に行ったりしなきゃいけない。
今はそんなことを考えている余裕が無かった。
25日には送別会があり、玉ちゃんと別れなければいけない。
それはまぎれもない真実だった。
カクテルを作ろう! その12 ブルーラグーン
ロンググラスを用意します。
ウォッカを30ml、ブルーキュラソーを20ml、レモン果汁を15ml入れます。
ソーダをグラスの八分目まで入れてステアします。
女性に大人気のカクテル。ブルーキュラソーの青が涼しげで、作っている自分も気持ちが良くなり、注文が入ると嬉しかったです。

『ブルーラグーン』
1960年、パリのハリーズ・バーのバーテンダー、アンディ・マッケルホーン氏が創案したもので、女性に人気のカクテル。
Blue Lagoonとは「青く澄んだ湖、池」という意味を持ち、透き通ったブルーが新鮮で見ているだけでも涼しさを感じる仕上がり。
出典:「ナツメ社 カクテル300」

次回予告
僕は玉ちゃんとさらに親密になるために、義兄弟ならぬ義兄妹の契りをすることにしました。もちろんこれから恋人だよという意味を込めて…。
第十九話 義兄妹