幻想編

第十七話 部屋と焼肉とベイブリッジ

登場人物紹介 首都高速用語解説

前回までのあらすじ…。
居酒屋を改築して、その店で働くことになった僕。
私生活では泥棒に2度も入られますがその泥棒は捕まりました。!
好きだったむつみさんが自殺未遂をしてしまいました。
気になる女の子のお嬢様との恋はあっという間に終局してしまいます。

幻想編とは…?
居酒屋で働いていたときのことについて書いていきます。

2000年3月7日(火)

やっと風邪が治った…。
でもこんな調子じゃ店長になるのは無理だな〜。
仕事は好きだけど体がもたないよ。

かず:「あの…、お話しがあるのですが」
店長:「それじゃあ、座敷でやろっか」
僕らは座敷に座って話し始めた。
かず:「もう仕事できないです」
店長:「辞めたいの?」
かず:「…。はい…。」
店長:「どうしたの〜?」
かず:「実は風邪をひいて限界を感じまして…」
店長:「辞めるのは簡単だけど、もう少し勤務時間を減らしてから考えてみてもいいんじゃない?」
う…、辞めさせてくれそうにないぞ!どうしよう。
かず:「1日8時間の週休2日制ならなんとか…」
店長:「よし、分かった。それじゃあアルバイトで給料下がるけどいい?」
う〜ひと思いにクビにしてくれ〜。
かず:「はい、よろしくお願いします」
なんで僕は人の頼みを断れないのだろう…。
来月からアルバイトで勤めることになった。


2000年3月11日(土)

僕の家には3匹のインコがいて、そのうち1羽がいじめられて羽をかじられ飛べなくなっていた。「かわいそうになあ、お前も俺と一緒だ」
その1羽を籠から出すと、バタバタして少しフワリと浮きますが、うまく飛べず地面に落ちてジタバタ動き回る。
追いかけて遊んでいたら、悲劇が起きた。
「ゴリッ!」
インコは 僕の足の下に…。
首が折れて、血が出て死んでいた。
ゴメンよ〜、ゴメンよ〜と何度もあやまった。
僕がいたずらしなければ、もう少し永らえた命。
取り返しの付かないことをしてしまった。
僕は自分の今の現状を思い、泣きながらテラスのプランターに埋めた。

2000年3月12日(日)

「CDプレイヤー無いの?それはつまらないよね。うちにいらないCDプレイヤーあるから取りに来る?」と数日前、よりやに来ていた玉ちゃんに声をかけた。
下心ありありだったけど、玉ちゃんは「うれしい!」と満面の笑みを浮かべてOKしてくれた。なんかうしろめたいな…。

父の車を借りて赤羽まで迎えに行き、自宅に到着。
ああ〜玉ちゃんが僕の部屋にいるよ〜。
ここ最近女性が僕の部屋に入ったことはないので、感動してしまった。
玉ちゃんと一緒に生活できたらなあ〜。
あんなことや、こんなことや…。

いかんいかん…。玉ちゃんがいることをすっかり忘れ、妄想してしまった。
玉ちゃんは不思議そうな顔でこちらを見ている。
「あ、そういえば、CDプレイヤーだったね」
でも頭の中で考えていることは、いつ押し倒してあれにもっていけるかそれだけだった。
CDプレイヤーを押入れから出してスイッチを入れてみたが、やはり壊れていた。
数年前に壊れたから、押入れに入れて置いたのだが、寝かせておけば直るものではなかった。

かず:「壊れてるね。いる?」
玉ちゃん:「え?壊れてる?」
かず:「うん」
玉ちゃん:「それは、もらっても困ります」
かず:「そうだよね〜」
玉ちゃんに怪しい目でにらまれてしまう。
やばいやばい、下心アリアリなのがバレてしまう〜。
僕は居間に置いてあったCDラジカセのことを思い出し、「ちょっと待ってね」と言って取ってきた。
かず:「これなら動くと思うんだ。ちょっと汚れてるけど」
玉ちゃん:「わ〜嬉しい。ありがとう」
玉ちゃんが大喜びしてくれて一安心。
でもそのCDラジカセは親のなので、バレないうちにここを出ないといけない。
これじゃあ、あれをやってる暇なんかないぞ〜。
「バカ、機嫌のいい今しか無いよ」と悪魔がささやく。
「ダメダメ、あれは結婚してからじゃなきゃダメ。嫌われるよ〜」と天使が言う。
う〜んどうしよう。男の決断だ〜。
結局、僕はまだ玉ちゃんに嫌われたくなかったので、天使の意見を採用した。

かず:「あ、鉄道模型やってみない?」
わ〜俺は何言ってんだ〜?意味不明発言だよ。鉄道模型で楽しんでくれるわけねえじゃん。
でも玉ちゃんは小さく頷き、ブルートレインが走るのを見て喜んでくれた。
僕は下心アリアリで部屋に呼んだ自分を悪いと思い、扇風機もプレゼントすることにした。扇風機はほしがっている友人がいるのであげるそうだ。
だめだ…。
こんなかわいい玉ちゃんをどうにかしようとしてる自分が恥ずかしい。

僕らはCDラジカセと扇風機を持って、自宅を出た。
車で、玉ちゃんの住んでいる学生寮まで行き、CDラジカセと扇風機を玉ちゃんの部屋に運ぶ。
う〜ん女性の部屋は久しぶりだ〜。
やっぱりいい香りがするな〜。
なんだかここだけ春になった気分。
玉ちゃんは他の学生3人と共同生活していて、寝るとこも一緒だそうだ。
玉ちゃん:「私の部屋はこちらで〜す」
かず:「へえ〜」
6畳の部屋に2段ベッドがあるさっぱりした部屋だった。
ここで玉ちゃん寝起きしてるのか〜。
ああ一緒に寝てみたい…。
玉ちゃん:「恥ずかしいからあんまり見ないで」
かず:「う、うん。じゃあそろそろ出ようか」

かず:「これから思い出作りにドライブしない?」
玉ちゃん:「いいね〜。しようしよう」

僕らは車で上野のキムチ横丁に行った。
当時は韓国の情報が少なく「るるぶ情報版」に載っていたのはここだけだった。
もちろんその場所を選んだのは、少しでも彼女が喜んでくれると思ったからだ。
渋滞と駐車場を探しているうちに17時になってしまった。
もうおなかペコペコ。

かず:「どの肉が一番うまいの?」
玉ちゃん:「韓国ではねえ骨付きカルビが一番うまいよ〜」
そんでそれを注文。

玉ちゃん:「骨付きカルビの骨をしゃぶる時は手で持ってやるのが韓国式だよ」
かず:「へえそうなの〜」

玉ちゃん野獣のように骨にかぶりついた。
韓国女性のパワーの源はこれなんだろうな。
眉間にしわのよった野獣のような玉ちゃんもかわいい。

うわ〜。
会計してびっくり。
8千円もかかってしまった。
高い思い出になっちゃったよ。

その後湾岸線を走り、横浜までドライブ〜。
車の中での会話が楽しい。
一度こういうのやってみたかったんだよね。
大師PAに車を止めて、ベイブリッジ見物。
玉ちゃんは夜景が好きなので、大喜び。
でも海風が冷たいので、僕の白いコートをそっと着せてあげた。

なんだかもう俺たち恋人同士みたいだ。
あの時悪魔の誘いに乗っていたら、こんな玉ちゃんの笑顔は見られなかっただろう。
僕の選択は間違っていなかったんだ。
帰りの車からは、光るレインボーブリッジと東京タワーを見え、玉ちゃんはまたまた大喜び。連れてきて良かった〜。

玉ちゃん:「今日いろいろとありがとね。楽しかった〜」
かず:「いや〜楽しんでくれてよかった〜。玉ちゃんの笑顔が見れれば僕は満足だよ」
玉ちゃん:「18日土曜日によりやをやめて、27日に赤羽から熱海の学生寮に引越しするんだ〜。そのあとは1週間くらい妹の手術のお見舞いで韓国に帰るよ」
かず:「あ、もう具体的な日付が決まったんだ。玉ちゃんがいなくなったら寂しくなるな〜」
玉ちゃん:「やっと仲良くなったのに、私も寂しい…」
僕の体にまたしても電気がビビビ…と走った。
かず:「いつかさ、二人で韓国に行こうよ」
玉ちゃん:「うん、行きたいね〜」
(でもそれは実現されない約束だった。)
かず:「向こうに引っ越したら、東京に来た時うちに泊まればいいよ」
玉ちゃん:「うん、無料だもんね。そうする」

学生寮の前で玉ちゃんを降ろすと、彼女は運転席の前に立った。
僕は電動窓をウィ〜ンと下ろした。
「これ、餞別…」
僕は玉ちゃんに1万円の入った封筒を手渡そうとした。
玉ちゃんは中に何が入っているか分かったらしく、「ダメです。受け取れません」と言った。「出世したら返してくれればいいから…」と言うとようやく受け取ってくれた。
玉ちゃんは「今日はいっぱい感動した。いろいろありがとね…」と言って僕のことをじっと見つめている。
「バイバイ、がんばんなよ」と言って僕はウィ〜ンと窓を閉めた。
窓の外の玉ちゃんは今にも泣き出しそうに目を潤ませている。
僕は鼻をすすって車を走らせた。
玉ちゃんがいつまでも見送っているのがルームミラーで確認できた。
カクテルを作ろう! その11 ブラックルシアン
ラージグラスを用意します。
ウォッカを45入れて、カルアを15入れます。
これは人気がなかったな〜。
彼女の素直さに惚れてしまいました。
あとは恋愛度数が上昇するだけです。

次回予告
26日に送別会開催が決まりました。
送別会はオフィシャルな別れ…。そこで僕はプライベートな別れをすることにしました。
(義兄妹は第十九話に変更になりました。)
第十八話 プライベートでの別れ