幻想編

第十六話 カラオケで初デート

登場人物紹介 首都高速用語解説

前回までのあらすじ…。
居酒屋を改築して、その店で働くことになった僕。
私生活では泥棒に2度も入られますがその泥棒は捕まりました。!
好きだったむつみさんが自殺未遂をしてしまいました。
気になる女の子のお嬢様との恋はあっという間に終局してしまいます。

幻想編とは…?
居酒屋で働いていたときのことについて書いていきます。

2000年2月27日(日)
あ〜あ”〜。
だめだ、まだ風邪が完治してないや…。
でも今日は大事な初デート。がんばらないと。
赤羽駅の改札に12時に待ち合わせ。
待ち合わせ時間が過ぎてしばらくした頃。
玉ちゃんが「ゴメ〜ン寝坊しちゃった…」
と言いながら走ってきた。
まあまあ初デートなんだし、これくらいは大目にみないとね〜。
僕の度量の大きさを示さねば…。
それに玉ちゃんのかわいい笑顔が見れただけでもう幸せ〜。
これって夢じゃないの?
あの夜、二人で残らなければ、こんなことにはなっていなかったはず。
運命って不思議だ〜。
「まず最初は、約束どおりカラオケね」
赤羽の北のほうにあるカラオケボックスに入店した。
玉ちゃんは僕がダビングした曲を歌う。
なかなかうまいぞ〜。
僕はガラガラ声なので、調子がイマイチ。
「こんなはずじゃないんだけどなあ」
と僕は元々あまりうまくもないカラオケの言い訳をした。
玉ちゃんもあまりうかない顔。
韓国人女性は、ほんとのことを隠さないのだ。
「あんまりうまくないね」と言われてしまう。
き、きびし〜。
「風邪がまだ治ってなくてさ〜」
と僕は言い訳ばかり…。

かず:「ねえ、韓国の歌をうたってみてよ〜」
玉ちゃん:「いいよ〜」

これが滅茶苦茶うまいんだ〜。
もう歌声に惚れたって感じ。
歌手デビューしてもいいくらいと言ったら大袈裟だろうか…。
ともかくそれくらいうまい。
かず:「うまいね〜」
玉ちゃん:「やっぱり?そうでしょ〜」
照れる玉ちゃんがまたかわいい。

韓国の国歌もうたってもらった。
なんかかっこいい国歌だ〜。
うたい疲れて、僕らはマックへ行くことにした。
「マックなら安く時間潰せるでしょ」と玉ちゃんは気を遣ってくれ、食事をご馳走してくれた。
おごったらおごり返すというのが韓国の礼儀らしい。
割り勘は絶対にしないそうだ。

玉ちゃん:「私ねえ、3月になったら、熱海のサービス業の学生寮に引越しなんだ〜」
かず:「え〜〜!まだ知り合ったばっかりなのに〜」
玉ちゃん:「ありがと…。でも日本のホテルで働くのが私の夢だから」
かず:「そうか、じゃあここにいるうちはできるだけ応援するよ」
玉ちゃん:「ありがと…。日本の映画って韓国より遅いよねえ」
かず:「封切のこと?」
玉ちゃん:「そう。韓国のほうが日本より6ヶ月早いよ〜」
かず:「いいなあ、マトリックスはいつ見た?僕は去年の10月だよ」
玉ちゃん:「マトリクスは去年の4月」
かず:「へえ早いんだねえ。韓国ではマトリクスって発音するんだ。」
玉ちゃん:「え?違う?気づかなかった。」
かず:「日本の映画は観た?」
玉ちゃん:「植民地時代の影響で日本映画や日本の文化は入って来ないよ」
かず:「え?そうなの〜?そこまで怨まれてるの?」
玉ちゃん:「韓国で〜、日本人が植民地時代の話をしたら、すぐに喧嘩になるよ〜」
かず:「こえ〜、俺が行ったら殺されちゃうかな?」
玉ちゃん:「韓国人のフリしてれば大丈夫!」
かず:「アハハハ…そうか〜、玉ちゃんあったまい〜」
玉ちゃん:「もし、韓国に来ることがあったら、実家に寄ってください」
かず:「へ?知り合ったばかりの俺が行ってもいいの?」

玉ちゃんはメモ用紙に韓国の住所を書いて僕に渡してくれた。
ここまで僕を信用してくれてるんだ〜。
なんだか急に緊張してきたぞ。

17時になり、僕らは「あれこれ」という居酒屋に行くことにした。
今日のデートの目的は他の居酒屋のサービス業を勉強しようという建前があったからだ。なぜ「あれこれ」なのかというと、以前そこの居酒屋の人がうちに飲みに来てくれて、「今度はうちにいらしてください」と言われたのでそのお礼だ。その時一緒にいたのが玉ちゃんというわけ。

まだ開店したばかりなので、店内は静か。
落ち着いた雰囲気が僕には好ましい。
かず:「いやあ、たまにはお客として、他の居酒屋を偵察するのもいいねえ」
玉ちゃん:「しい〜〜、変なお客と思われるよ〜」
玉ちゃんは箸袋に今日の日付と「withかず」と書いているので「何やってるの?」と尋ねた。「これはねえ、今日かずさんと来た記念にしておくんです」
「それなら!」と僕は思いついて、箸袋に「玉ちゃんと知り合えて、友達になれて良かったです。これからもよろしくね。もし困ったことがあったらすぐに相談するんだよ」と書いて渡した。
玉ちゃんは「わ〜〜嬉しい〜!ありがと〜!じゃあ私も書いてあげるね」
と言って、玉ちゃんも箸袋に何やら書き始めた。
「日本でかずちゃんのようなやさしい人と会えて運がいいです。私より年上だけど友達のように扱ってくれて、私も楽だよ。この先どうなるか分からないけど互いに連絡し合いましょう」と書いてあった。
またも体中に電気がビビビ…と走った。(2回目)
韓国は儒教の国だから、年上を敬わなければいけないので、その年上の僕が友達のように接してくれたのが嬉しかったみたいだ。
これは、僕の家宝だなあ。
僕は箸袋をしばらく見つめ、サイフの中に大切にしまった。

かず:「あ、あのさあ、か、彼氏とかいるの?」
うわあ〜ベタな質問しちゃったなあ。玉ちゃんのこと好きなのバレバレじゃん。」
玉ちゃん:「いないよ、日本に来る時ねえ別れた」
かず:「あ、そうなの〜、結婚とかはしたいと思ってる?」
玉ちゃん:「仕事が忙しいから結婚はできないよ〜、しばらく夢をかなえる努力しなくちゃ」
かず:「彼氏とはやったの?」
ひゃ〜、俺は次から次になんて質問をしてんだ〜。顔が赤くなるよ〜。

玉ちゃん:「やってないよ…。韓国では親の許しを得て、結婚しないとできないんだよ〜」
かず:「ふ〜ん、そうなの〜」
と僕は冷静を装っていたが、かなりびっくりした。
日本の乱れきった文化とは大違いだ。
韓国の社会はきちんと秩序が保たれているらしい。
一昔前は日本もそうだったのになあ。

僕らはカクテルで乾杯し、たわいのない世間話をした。
玉ちゃんは自分で注文した、納豆オムレツを全部食べられず残してしまう。
かず:「あれ?納豆好きって言ってなかった?」
玉ちゃん:「好きだけど、これはちょっと…」
かず:「じゃあ僕のと交換しよう」
玉ちゃん:「いいの?」
かず:「いいよ!」
僕らはお互いのお皿を交換した。
玉ちゃん:「ありがと…」
僕は玉ちゃんの食べかけの納豆オムレツを良くかみしめた。
玉ちゃんは僕の食べかけの揚げ出し豆腐を食べている。
かず:「おいしい?」
玉ちゃん:「うん、おいしい」
かず:「お互い間接キッスだね…」
玉ちゃん:「そうだね〜。でも韓国では、こういうのあたり前だよ。小皿で分ける日本のほうが変だよ〜」
かず:「お!その韓国の文化いいね。僕は大賛成だよ〜。間接キッスは日常茶飯事なんだね。同じ鍋をみんなでツツクのっていいよ」
玉ちゃん:「そうでしょ〜韓国いいでしょ〜。日本では裸の付き合いっていうの?」
かず:「うん、ちょっと違うけど、まあ似たようなもんかな…」

日本では、他人の食いかけを食べることは、恋人や家族以外ではまずありえない。
へたをすると恋人や家族でも他人の食いかけは食べないだろう。
僕は彼女が食べ残した納豆オムレツを食べながら、体の中から玉ちゃんを好きになっていく自分を感じた。
カクテルを作ろう! その10 スクリュードライバー
ロンググラスを用意します。
ウォッカを45入れて、オレンジジュースをグラスの八分目まで入れます。
名前はかっこいいけど、作り方は簡単なのね〜。
玉ちゃんは僕のことをかなり信用してくれてるらしい。
初デートで間接キッス…。
ここまでできれば、もう幸せ〜。言うことないっす。

次回予告
僕の風邪がやっと治りましたが、よりやに勤める自信がなくなってしまいます。
2回目のデートで玉ちゃんを僕の部屋に連れ込むことに成功しましたが…。
第十七話 部屋と焼肉とベイブリッジ