幻想編

第十三話 初めての店長代理

登場人物紹介 首都高速用語解説

前回までのあらすじ…。
居酒屋を改築して、その店で働くことになった僕。
私生活では泥棒に2度も入られる波乱ぶり!
何度も別の男と来店するみつみさんの行動は理解不能。
しかも、婚約者までいるのに…。

幻想編とは…?
居酒屋で働いていたときのことについて書いていきます。

2000年2月3日(木)

「おっかしいな〜、売り上げ金が全然ないよ〜」
店長は銀行に行ったあと、この台詞を吐くことが多くなった。
かず:「誰かがレジから盗んでいるんじゃないですか〜?」
店長:「俺が締めてるんだからそんなわけないじゃ〜ん」
かず:「じゃあ自動引落で勝手にどんどん支払いが増えてるんですよ〜」
店長:「自動引落は光熱費だけだよ」

僕は居酒屋の改築をしている時に、W建設の社長に店長がキャッシュカードを渡しているのを思い出した。
かず:「あの社長が引き出しているんじゃないんですか?」
店長:「うん、そうなんだけどさ〜、店の運転資金まで下ろされちゃってるんだよな〜」
実はこの居酒屋を改築する前、居酒屋の毎日の売り上げを改築費用の返済にあてることに店長と社長との間で取り決めてあったのだ。
有線放送の会社や酒屋さんへの支払いも社長がすることになっていた。
決めた時は同じ会社だったが、今は二人とも別会社。
店長が社長の会社から独立した形だ。
取り決めも口約束だから、事情はかなり複雑。

店長は有線放送の会社や酒屋さんから支払いの催促を受けて困っている。
どうやら社長は、左官屋やペンキ屋には工事費を支払っているが、居酒屋の業者には支払っていないらしいのだ。
業者からは、居酒屋のほうへ直接連絡が来てしまい、店長が困るという状況だ。
社長に問い合わせてみても、あやまるだけで埒が明かないらしい。
店長は仕方なく銀行から借金をして、業者の支払いにあてた。

僕は「店長、もう一度ちゃんと社長と話し合ったほうがいいと思いますよ。口約束じゃ法律上意味無いですから、契約書かなにか書いたほうがいいんじゃないですか?お金関係は後々のためにもちゃんとしといたほうがいいですよ」
と店長にアドバイスした。
すると店長は「分かった、今日社長に会って話してくるよ」と言った。
そして…。
店長:「じゃあ君が今日俺の代わりやってくれる?」
かず:「え?僕が?だめですよ〜」
店長:「大丈夫!レジ打てるようになったじゃない、締めのやり方教えるからさ〜」
かず:「まあレジは打てるようになりましたけどね。でも店長代理だなんてそんな大役僕に務まるかな〜?」
店長:「大丈夫だって〜、自信持ってよ〜」

僕は店長の強引さに勝てるはずもなく、引き受けるしかなかった。
18時頃店長は「じゃ、行って来る。あとは頼んだよ」と言って出かけてしまった。
僕は何か大きな失敗をするんじゃないかと、ガチガチに緊張しながら、レジとお客の案内で忙しく仕事をした。
そこへ玉ちゃんが助っ人としてやってきた。
地獄に仏とはまさにこのこと…。
一心不乱に料理やビールを運び、お客様の話し相手になったりした。

0時過ぎ…。
ようやく最後のお客さんが帰りホッとした。
料理長のチーフが帰ると、僕と玉ちゃんの二人だけが残った。
かず:「ビールクーラー洗っといてくれる?」
玉ちゃん:「はい」
玉ちゃんはテキパキと仕事をこなす。

玉ちゃん:「終わりました〜」
かず:「じゃあ次は、明日のランチの用意してくれる?」
玉ちゃん:「はい」
店長代理として、あれこれ指示するのは悪い気分ではない。
たまには店長代理もいいなあ。

しかし、レジのお金が集計と合わない!
かず:「あれ〜おかしいなあ、あと5千円たんないぞ〜」
玉ちゃん:「…」
かず:「もう一回計算してみよう」
玉ちゃん:「賄いの用意できました〜」
かず:「あ、先に食べてていいよ」
玉ちゃん:「でも…」

そんなやりとりのあと計算のやり直しで、それから30分が経過していた。
一つ向こうのテーブルにはかわいい玉ちゃんが座っていて、おいしそうなコロッケもある。玉ちゃんと一緒に仕事をするうち、僕の心の中には何かが芽生え始めていた…。

計算は合わないし、玉ちゃんと早く楽しくお食事したいし…。
どうしよう、どうしよう?
僕は「お金」と「玉ちゃんとの楽しいお食事」を天秤にかけた。
かず:「あ〜もういいや、自分のお金つっこんじゃえ〜!」
僕は「玉ちゃんと楽しく賄いを食べる」ほうに「決断」した。
かず:「ふ〜やれやれ、やっと終わったか〜」
玉ちゃん:「じゃあ、ご飯を温めなおしますね」
かず:「あれ?まだ食べてなかったの?」
玉ちゃん:「はい」
かず:「なんで?」
玉ちゃん:「先に食べるのは、失礼だと思ったから…」

僕は脳みそをハンマーで殴られたような感覚になった。
そう今まさに、電気がビビビ…と体中を走っていったのだ。
「な、なんていじらしい子なんだろう」

コロッケをかじる彼女が無茶苦茶かわいい。
ドキッドキッ…
僕は胸を高鳴らせながら、デートの約束を取りつけるための理由を考えていた。
どうしようどうしよう?
カラオケでも誘ってみる?

かず:「ねえ、カラオケは好き?」
玉ちゃん:「好きだけど?」
かず:「じゃあ、今度の休みにカラオケ行かない?」
僕は赤羽駅前のカラオケBOXの1時間の値段を思い出しながら、ドキドキして返事を待った。
NOか?YESか?
二つに一つだ。
彼女はどちらに「決断」するのだろう?
「まだそんなに仲良くもなってないのに、デートの誘いなんて断られるに決まってる」
「いやいや、意外とあっさりOKだったりするんだよ」
(続きは次回?)

(としたいところでしたが最後まで続けましょうね)
カクテルを作ろう! その7 イチゴミルク
ラージグラスを用意します。
シェーカーにイチゴリキュールを30入れて、ミルクを60と氷を入れてシャカシャカシェイクします。10回ほど振って冷たくなったら、グラスに注ぎます。
あま〜い初恋の味?
玉ちゃんは明るく「いいよ」と言ってくれた。
「うっひゃ〜、OKしてくれたよ〜、やったぜべいべ〜、もう死んでもいい!って一回死のうとした男が考えるとシャレにならんぜ!とにかくそれくらい最高に嬉しい」
そして僕はそんな感情を抑えつつ、冷静に話しを進めた。
かず:「それじゃあさ!待ち合わせとかで、連絡取りたいから携帯番号教えてくれる?」
なんかこれって使い古されたナンパテクみたいだよなあ。
「教えない!」なんて言われたらどうしよう?
ところが…。
玉ちゃん:「ピッチ(PHS)だけどいい?」
かず:「うん、いいよ〜」
お〜し!携帯番号ゲットだぜ〜!
僕は玉ちゃんの携帯番号を教えてもらっただけで、幸せだった。
そのうえ、後日デートなんて夢みた〜い!
夢じゃないよな…。
27日12時に赤羽駅の改札で待ち合わせすることになったとさ…。
今日は店長代理で大役だったけれど玉ちゃんと親密になれて最高の日だ〜。

次回予告
姉さん大事件がおきました!
男女関係は色々あります。むつみさんはいったいどうしちゃったの?
第十四話 四者面談