クリス   (Kris)
 
短剣
全長・40〜60センチ,重量・0.5〜0.7キログラム
クリスは、マレー民族に伝わる短剣で、世界中で最も洗練された武器の1つと言われています。

クリスは長い歴史の中で練り上げられ、構造・装飾ともに複雑な特長を持ち、神秘的な象徴が込められています。
両刃で切っ先が鋭く、刀身が真っ直ぐなモノと波形にうねったモノとがあります。
隕鉄を使用した刀身は、独特の鋳造技術により刃に様々な文様が浮かびます。
鞘も柄も豪華な装飾がされており、精巧な彫刻や宝石をちりばめたモノもあります。

クリスはマレイ語で「短剣」を意味します。
歴史は古く、ヒンドゥー諸王朝の発展した8世紀には既に登場していました。
武器としてだけではなく王家の宝とされる事もあり、1本1本にそれぞれ意味がありました。
邪悪を払い身を守るためのタリスマンとしての存在でもありました。
その為、マレー式の正装で身につけたり、舞踏などの呪術的なモノにも使用されます。

 

 

庵の裏から怪しげな囁きが聞こえてくる…。
グラグラと煮立つ大釜からは真っ白な湯気が立ち上る…。
大釜の前には真っ黒なフードに身を包んだ怪しげな人影が1つ…。

ブツブツブツブツ……。
よし…最後にコイツを刻んで鍋に放り込めば…。

「何やってるんですかぁ!!」

へぶしっっ!!!

「まったく人の家の裏で…って師匠!」

いきなり何をする〜!

「何をする〜!じゃないです!何やってるんですか!こんな所で!」

何って…。

「あぁ!またこんな怪しげなナイフまで持ち出し…。」

怪しげとは失礼な〜。
これはクリスと言ってな、こう見えても由緒正しいナイフなんだぞ〜。

「こんなフニャフニャ波打っているのにですか?」

そうだぞ〜、武器としてだけではなく、何らかの儀式等にも使われているんだ〜。
だからそんな風に乱暴に扱うんじゃない〜。

「はいはい。」

まったく〜、けっこう高価なモノでもあるんだぞ〜。

「確かに精巧な細工が施されていますよね。」

そう、だから大事に扱うように〜。

「はい、分かりました。
 …ところで師匠は、こんな所で何やってたんですか?」

ん?この大鍋見て分からないか〜?

「…何かの怪しい儀式ですか…?」

うんにゃ、カレー作ってた〜♪

「作るなぁ!」

鍋の中身はニンジン、ジャガイモ、肉にタマネギ…。
ホントにカレーの材料だし…。
高価だなんだと言っておきながら…料理に使ってたのか主よ!
しかも何で外で…しかもこんな大釜で…。
尚、その夜の食事はカレーだったが、その席に主の姿はなかったそうな…。

「武器と防具 西洋編」 新紀元社
「武器事典」 新紀元社